【完】淡い雪 キミと僕と
美麗には会わない。
後1日、いや3日。頑張って1週間。自粛するべきだろう。
でも、早く会いたい。いや、美麗に会いたい訳じゃなく、雪に会いたいんだ。けれどあのマンションに行ってしまったら、また美麗を抱いてしまうのが怖かった。
自分の理性を抑えられず、また彼女を傷つけたくない。
それに彼女がそれを拒まなかったとして、数いるセフレのひとりにするのも嫌だった。
この感情は、なんというのだ?
’昨日の事はお互いに忘れましょう’
冷たく突き放された気がする。あの夜をなかった事にしようと彼女が言うから、胸がズキっと痛むのを感じたのだ。
なかった事になんか出来るものか。あの夜は、確かにあった。美麗は処女で、俺は彼女を抱いて、久しぶりに朝までゆっくりと眠れたのだ。
セフレなどど朝までゆっくり眠ったりなんかしない。そんな俺が安心し、眠りこけてしまったんだ。 だから忘れる事なんか…
仕事の机の上にあった携帯がメッセージを受信する赤ランプを点滅させる。
「なッ」
開くと、それは美麗からのメールだった。
『友達にどうしてもって言われて、港区で飲み会になってしまいました~
悪いんだけど、会社終わってそのまま行くから夜雪の面倒を見てくれませんか?』
どういう事だ?!
お前は港区女子を止めたのではなかったのか?!
モヤモヤした気持ち。その気持ちの真意を知る事もなく、処女でなくなったからって港区で再び遊び回ろうって魂胆か?!等と考えてしまった。
そんなの、絶対に許さない。燃え上がるようなこの怒りの感情がまさか…嫉妬であるなんてこの時は思いもしなかったんだ。