【完】淡い雪 キミと僕と
…だから何だって言うのよ。アンタはわたしの何よ。
それにしてもしつこいったら無い。
『友達からどうしてもと頼まれて、ルナというお店に少しだけ顔を出してきます。
何度も言うようですが、雪を頼みます』
そう返信すると、今度は着信音が鳴った。
…だから本当に何だと言うのだ。
「――おいッ!」
思わず耳がキーンとしてしまう程大きな声。その声には明らかに怒りが含まれていた。
考えている事がさっぱりと分からない男だわ…。
「何よッ。大きな声出さないで!」
「ルナだと?!
ルナがどういう場所か分かって行くつってんのか?!」
「いや…普通に飲み会みたいですけど…。もぉ~ほんと、うっさい。
友達に頼まれてどうしても断れなくって顔を出すだけなんだから、あ…待ち合わせ場所に着きそうなので電話切りますね。
くれぐれも雪のお世話お願いしますね」
「このッ尻軽が!」
何を、と思った瞬間、電話越しからはツー…ツー…と機械音が空しく鳴り響く。
マジで何?何をひとりで勝手にキレて暴言吐いてると言うのよ?自分から掛けてきたというのに挙句にはガチャ切りして、なんという自分勝手な奴なんだろう。
それでも西城さんの事だからきっと家には行ってくれるだろう。わたしにどれだけ文句を言おうと、彼が雪を可愛いと思う事は間違いないのだから。
しっかしムカつくな~。誰が尻軽よッ。尻軽はないでしょ、さすがに。
携帯の電源切っておこうっと。
それを鞄に忍ばせ待ち合わせ場所に着くと、莉子がこっちに向かって大きく手を振っている姿が見えた。