【完】淡い雪 キミと僕と
「美麗、久しぶりッ」
「ほんと~久しぶりだね」
「最近の美麗ったら全然遊びの誘いに乗ってこないんだも~ん。
何?もしかして彼氏出来たとか?」
莉子は相変わらず港区で遊び回っているようだ。SNSの類は一切見ていないけれど、手に持っていたバックは有名ブランドの今期の新作だ。
それに着ていたピンクのセーターもとあるブランドの新作で、胸ががっつり開いている。豊満な胸が自慢の、実に彼女らしい服装だ。
「別に彼氏なんて出来てないけど」
「美麗ってちゃっかりしてるから、いつの間にか彼氏作ってそうなんだもん。
報告してよ。友達なんだから」
’友達’ねぇ。
わたしはもう、いまいち港区で培ってきた友人関係を信用出来なくなっていた。だって実際に港区で遊ばなくなった途端周りの友達の連絡はぱたりと途絶えた。
そんなもんっちゃーそんなもんなんだろうけど、中身のない友達ごっこはもううんざりだった。今日も莉子にどうしてもと頼み込まれ、渋々OKを出しただけで、六本木の会員制の人気のお店も、興味は無かった。
数か月前のわたしだったのならば、尻尾を振って喜びついていったに違いない。
隣で今日は超有名な芸能人も来るんだよ、と言う莉子の話を全く持って興味がわかない。
「美麗のブーツ可愛いッ。それってミュウミュウの新作でしょう?」
足を止め、彼女がジーっとブーツに見入る。
対称的に洋服とバックは決めているのに、彼女の履いていたパンプスは薄汚れていた。
いつかの西城さんの言葉を思い出し、心の中で小さく笑みが零れ落ちた。