【完】淡い雪 キミと僕と

「美麗!」

ひと際目を惹く美しい女性が、わたしの名を呼ぶ。

振り返ると、隣に座っていた男性にもたれ掛かり、こちらを見つめ’おいで’と片手をひらりと振る。

一時期港区で一緒に遊び歩いていた友理奈だった。莉子とも共通の友達で、業界人の間でもとても有名な女の子だった。

彼女には、少し痛い思い出。

なんといっても、初めて西城さんに会った日、彼を紹介してくれたのは友理奈だったからだ。元々知り合いであると言っていたふたり。おのぼりさんだったわたしが西城グループの一人息子の西城さんだ!と騒いだら、わたし知り合いだから、と言って快く紹介してくれたのだ。

今となっては諸悪の根源である。

「友理奈久しぶりだね」

「本当に、久しぶり。美麗ったらインスタとかも全部止めちゃったでしょう?
最近は全然飲み会とかにも参加しないから、生きてるか心配してたんだからね~」

何を、連絡の1本も寄こさなかったくせに、どの口が言う。まぁ、わたしだってわざわざ友理奈と連絡を取りたいなんて思っちゃいなかったけどね。

それにしても相変わらず綺麗な女性だ。元モデルなだけある。胸だけが自慢の莉子とは大違いで、すらりとしたスタイルで、手と足なんて折れそうな程細いのに、出る所はちゃんと出ている。

大きな、くっきりとした瞳に、手のひらでおさまってしまうのでないかと思う程小さな顔。勿論彼女は界隈でもとてもモテた。

…全身整形のサイボーグ、という噂も聞いた事があるのだが、そういった類の陰口は日常茶飯事で、ようするに僻みややっかみなのだと思う。

「莉子も久しぶりだねぇ~」

「うんうん、友理奈ちゃん、久しぶり。
今日は誘ってくれてありがとうねぇ。あッ。友理奈ちゃんのネックレス超可愛いし」


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