【完】淡い雪 キミと僕と
「こんばんは…」
「美麗ちゃんだよね?実は何回かパーティーで会った事があるんだ。覚えていない?」
生憎年下に興味はない。 けれどこんな可愛らしい男の子なら記憶の片隅にあってもおかしくはないと思うんだけれど?
「ごめんなさい。あんまり覚えていなくて」
思わず作り笑いを浮かべる。そう言うと、彼は大袈裟な位肩を落とした。
誰にでも良い顔をしようとする、港区根性はまだまだ失われていないようだ。
「マジかー。ショック…。
何度か声を掛けようかとも思ってたんだけど、美麗ちゃんすっごくモテていたから。
はじめまして、佐久間潤と申します」
偉く丁寧な挨拶をしてくれたもんだ。そして、にかッと笑う彼の頬に再び笑窪が浮かび上がる。人懐っこい、犬の様だ。
こういう胡散臭い人間は、大抵グレーゾーンの危ない商売をしたりしているのだ。関わらないのが、吉。そう思い、適当に挨拶をする。
話の輪に入ってきたのは、友理奈の方だった。
「ごめんなさい。沢山の人がいるから。
山岡美麗です。よろしくお願いします」
「そうそう美麗、潤くんってぇーすごい人なんだよぉ~」
甘ったるく話す友理奈の声がウザい。けれど、過去のわたしだって男の人に猫撫で声を出していたかと思えば、それは人の事を言えない。
友理奈は得意になって、潤くんがいかにすごいのかまるで自分の事のよう、話し始めた。
「S.A.Kの社長の息子さんなんだよ~」
「それってアパレル会社の?」
「そうそう~、しかもおばあ様はあの有名な佐久間 文江さんなんだって」
「俺がすごい訳じゃないから~!あくまでもばーさんやとーさんがすごいだけなんだから。
友理奈ちゃんもあんま大袈裟に言わないでよ、美麗ちゃんだって困ってるじゃんか。ね?」
「いえ、そんな……でもすごいですね」