【完】淡い雪 キミと僕と
S.A.Kと言えば、若い女性に人気のトレンドのファッションを取り揃えている有名ブランドだ。
そして、彼のおばあ様にあたるFUMIE SAKUMAも世界中の誰もが知る有名デザイナーの名前である。
どこか浮世離れして胡散臭いなどと思ってしまい、申し訳ない。西城さんに匹敵する程の生粋のお坊ちゃまではないか。
「俺は全然すごくなんかないよ。今は自分でメンズブランドを立ち上がようとしてるんです」
「それはすごい…とっても若そうに見えるけれど…」
「24歳です。よく童顔だって言われて…この間なんてコンビニでお酒買うのも年齢確認されたくらいで」
「うっそ…。同い年?…見えない…」
思わず本音がぽろりと漏れると、彼はまた笑った。その笑顔に不覚にもドキリとしてしまった。
駄目なのだ。分かっているのだ。
わたしはこの手の容姿の男に弱いのだと。優しく柔らかい雰囲気を持っていて、笑うと可愛い人。 井上さんの事があって、自分のタイプなど身をもって知っているのだ。
「もー、美麗ちゃんに言われたらそれはそれでショックだなぁ~。
ね、ね、美麗ちゃんは何の仕事してるのッ?」
「わたしは受付嬢です」
「うわぁ!すっげぇ似合うし。美麗ちゃんに受付されたーい。俺だったら毎日意味もなく会社に通っちゃうかも…!」
「プっ。それは大袈裟ですよ。口が巧いんですね。佐久間さんって」
「佐久間さんなんて他人行儀な呼び方しないでよ。潤って呼んで!潤って!」
何とも人懐っこいというか…。物腰の柔らかい男だ。けれどこんな事、誰にでも言っているんだろうな。だって絶対モテないわけないじゃん。
それにしても西城さんといい、彼といい、神様は全く持って不公平で、特別な人間を作りたがる。