【完】淡い雪 キミと僕と
「気安く触るな。
美麗、行くぞッ」
訳も分からぬまま無理やり手を引っ張り外へ連れ出そうとする西城さん。
遠くから彼の名を呼ぶ声が聴こえて、ぴたりと足を止める。
「大輝くんッ!何で…」
上を向き、彼の顔を見上げたら物凄い剣幕で、明らかに怒っていた。自然とわたしを掴む腕にも力が入っていた。
それでも西城さんは腕を離す気配は一切見せずに、ぎろりと友理奈を睨みつけた。
「お前だろう。どうせ下らない事を仕組んだのは。 金輪際俺の前に姿を見せるな」
ぴしゃりと言い放って、乱暴に扉を開ける。 その時友理奈がどんな顔をしていたかは、わたしの目で確認する事は出来なかった。
無言のまま腕を引っ張り続け引きずられるかのように歩かされ、挙句無理やり車に投げ捨てられるように乗せられた。彼に掴まれた腕がジンジンと熱を持ち痛む。
そして車に乗ったかと思えば乱暴にアクセルをかけ、猛スピードで車は走り出してしまった。
なんなのよ…。
言いたい事は山ほどあった。それにアンタに掴まれた腕が未だに痛む。どう責任を取ってくれるって言うんだ。
それに勝手にお店に来て、雰囲気を悪くして、あれじゃあ友理奈にまた何を言われるか分かったもんじゃない。
けれどハンドルを握る西城さんは怒りに満ちた表情をしたので、何も言えなくなってしまう。
わたしがどこに行こうが、アンタには関係ない!…それだと言うのに、何をそんなに怒っていると言うのだろうか。
重苦しい沈黙が続く中、彼はこちらに目も向けぬまま口を開く。