【完】淡い雪 キミと僕と

「ルナがどういった場所か分かってて行ったのか?」

「どういう場所って…会員制のバーでしょう?」

「フンッ、ただの会員制のバーが何故ベッドやシャワーも完備している。気持ち悪ぃな。
あそこは有名な野蛮な人間の集まりのクソ趣味の悪いバーだ。あんな所にいたらアンタみたいな色気のない女でも見知らぬ男に食われていた所だったぞ」

「嘘……そんなの、知らない…」

確かにバーにシャワーやベッドが完備しているのもおかしな話だと思うけれど、港区界隈では有名なお店だったし、何よりも会員制だと言うのだからおかしな人間は入れもしないじゃないか。

「知らないでのこのこついて行くとは、ほんっとうに、馬鹿だな」

「何よ!何でアンタにそんな事を言われなくっちゃいけないのよッ!わたしがどうなろうとアンタには関係ない事でしょう!」

「うるさい!黙れ!」

「降ろしてよ!アンタの顔なんて見たくもないんだから!」

「降ろさん!それに何だあの男ッ。
お前の腕を掴んで、なぁ~にが’彼女を離せ!’だ!女みてぇな顔をしやがって
気持ち悪ぃ奴だな!あんな男にチヤホヤされて何を喜んでいるんだ!クソ女がッ」

はぁ?!

一体いつどこでわたしが佐久間さんにチヤホヤされて喜んでたって言うのよ。どれだけ妄想が激しいんだっつの。

訳も分からず言い合いをしたまま車は走り続け、止まったかと思えばそこはいつも彼が利用しているパーキングで、車を降ろされた瞬間再び腕を強く掴まれ、マンションまで引きずられるかのように連れていかれる。

痛いつってんじゃないのッ!この暴力男!DV野郎!警察を呼ぶぞ?!


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