【完】淡い雪 キミと僕と

乱暴にマンションまで連れていかれたかと思えば、部屋に入るなり彼はベッドにわたしを押し倒した。

強く叩きつけられ、ベッドのスプリングがキシキシと鈍い音を立てた。瞬間、彼の唇がわたしの唇に重なった。それはとても深い深い場所まで。

息が出来ずに、思わず彼の胸を拳で叩く。そんなのはお構いなしと言った感じで服に手を掛ける。

「何すんのッ?!止めてよ!ほんっと、いい加減にしてッ」

その言葉に、彼の手がぴたりと動きを止める。

さっきまで怒っていたかと思えば、困ったように眉を下げる。その目は何だかとても悲しそうに、わたしには見えた。

へたりと力が抜けたように重くのしかかった身体。ベッドに顔を埋めたまま、彼は小さく呟いた。

「何だよ……そんなにあの場に居たかったって言うのかよ。あんなへなちょこな女みてーな顔をした男がそんなに良いって言うのかよ……」

わたしにはもう、彼の考えている事が分からなかった。 こうやって乱暴にされる事も、陰で女と一緒になってわたしを馬鹿にしていた事も。

けれど、確かな事がひとつだけあるわ。どんなに乱暴に扱われたって、陰で馬鹿にされていたって、もうこの気持ちはきっと止められない。

どうしてこうなってしまったんだろう。こんな事あってはいけない事だった。でももう、自分の気持ちに嘘をつく事が出来なくなっていた。

…そんなの、傷つくだけの結末だって分かっていたのに。



わたし、西城さんの事が好きだ――



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