【完】淡い雪 キミと僕と
美麗から港区で飲みに行くと連絡を受け取った時。
場所がルナだと聞いた時。ルナは、良くない噂も聞くし、あそこは権力や金で女をどうにでも出来ると思っているような男の集まりじゃないか。
と、思った後、自分だって権力やお金で女をどうにでも出来ると思っているどうしようもない男だという事に気が付いた。
それでも、彼女がそんな場に行く事を許せなかった。携帯の電源を切っているのが分かって、不躾ながらもお店にまで乗り込んでしまうほどには混乱していた。
案の定、店には友理奈が居た。
そういう集まりには顔を出す人間だ。それに美麗が巻き込まれるなんてたまったもんじゃない。
美麗は泣き続けた。何度涙を拭っても、それは溢れ出してくる。
思わずキスをすると、びっくりしたように目を見開いて、ちょっとだけ泣き止んだ気がする。でもまた直ぐに苦しそうに顔を歪ませるんだ。
「言った…」
「え?」
「西城さん…友理奈とそういう関係だったんだってね…。今日友理奈から聞かされた。
わたしの事…面倒くさいって…利用してる便利な女って友理奈に言ったんでしょ……。
陰で散々わたしの事友理奈に愚痴って、ふたりで楽しかった事でしょうね……」
「そんな事言ってない…!!」
「だって友理奈が言ってたもん!」
「美麗は俺と友理奈が言った事どっちを信じるんだッ!」
思わず強くそう言うと、再び美麗の瞳いっぱいに涙が溜まった。そして目を逸らし、小さく呟くんだ「そんなの知らないよ…」と。
冷たい沈黙が部屋いっぱいに広がって行って、美麗の体がベッドの端背中を向けて小さく震えている。