【完】淡い雪 キミと僕と
どっちを信じるんだ、なんてそれこそ戯言か…。
美麗にとって俺は、信頼に値する人間ではないだろう。何という不毛な事を言ってしまったのだろう。
窓の隙間から、冷たい風が吹きすさぶ。気がつけば、秋も終わりを迎えようとしていた。彼女と雪と過ごし、ふたつの季節をまたいだ。その中で自分が勝手に美麗に信頼を置いただけの事。彼女はこんな俺を信用なんかしちゃあいないんだろう。
けれども信じておくれ。面倒くさい等…便利な女等…思っていない。この先も絶対に思わない。
「……!」
こちらに背を向ける美麗の背中を後ろから抱きしめる。さっきのように力任せではなく、ゆっくりと静かに。
少しだけ肩をびくりと揺らしたけれど、抱きしめた腕から伝わる鼓動の速さを聴きながら静かに目を瞑る。彼女の柔らかい髪の毛からシャンプーの香りがふわりと鼻を掠める。
なのに、背中越し自分の鼓動の速さが彼女へ伝わっていないかばかり気にしていた。どうして俺はこんなにドキドキしていると言うのだ。
「ごめん…ごめんなさい…」
素直に謝罪を口にすると、腕の中僅かながら彼女の体が動く。 さっきより少しだけ力をいれ抱きしめると、自分の息を整えるよう、小さく息を吐いた。
どうやら少しだけ落ち着いたようだ。 背中を向けたまま彼女が言う。
「こちらこそ、ごめんなさい…。少し混乱してしまったみたい…。子供みたいに泣きじゃくって、馬鹿みたいね。わたし…」
「そんな事ないよ…。俺が悪い。腕を強く引っ張ってしまい、すまない。痛かっただろう?」
「大丈夫…。もう痛くない」
「それでもごめん…」