【完】淡い雪 キミと僕と
「いや、平気だ。今は’ものすご~く’痛いけど…一晩休めば治りそうだ」
「そう…ならいいけれど。わたし、お風呂のお湯溜めてくるわ…。
確かモーラステープもあった筈だから、アンタがお風呂に入ってる間に探しておいてあげるわ」
「いや、アンタがどうしてもって言うのならばふたりで入ってやってもいいんだが…」
「バッカじゃないのッ。冗談ばっかり!」
顔を真っ赤にさせ、カンカンに怒った彼女はブツブツと文句を言いながらもお風呂に向かう。
浴室からは、お湯を溜める水の音が聴こえてきた。
…いや、半分冗談で半分本気だったんだがな。
1Kの小さなマンションは浴室も狭い。よってより密着する形になる。普段ならば勘弁だけど、アンタとならばまあアリよりのアリではあったのだがな。
湯の中には、ピンク色の入浴剤が入っていた。そこからは仄かに花の香りがした。
そしてお風呂はとても狭い。自宅マンションのお風呂は馬鹿でかく、悠々自適に足も伸ばせるがこの狭い浴槽では、膝を折らなくてはいけない。
けれど、お湯の温度も丁度良いし、花の香りの入浴剤も嫌いじゃない。何故かとても気分が良い。
そしてお風呂から出ると、そこには黒いスウェットの上下セットがバスタオルと共に畳まれ置いてあった。
真新しいスウェット。それは俺の背丈にぴったりと合っていた。さすがにシルク素材とは言わないが、着心地は悪くはなかった。
「あ、ぴったりじゃない」
スウェット姿の俺を見た美麗は嬉しそうに声高らかにそう言った。