【完】淡い雪 キミと僕と
「…だから、お腹に何か当たるんだってばぁー…。アンタってやっぱり性欲モンスターなのッ?」
「だからこれは生理現象と言っただろう。本能には抗えない物だ。でも安心しろ。もうあんな事はしない…」
トクン、トクン、と心臓の音が絡まり合う。
どちらの鼓動の音だったかは定かではないが、身体を繋げなくとも、抱きしめ合うだけで居心地が良いと感じる女は早々いない。
柔らかい彼女の身体を抱きしめ、そして頬に手をかけて髪をかき上げる。薄暗い部屋の中で美麗の顔はいまいち掴めないが、それを拒絶する事は無かった。
だから思わず調子に乗ってしまい、唇に軽いキスを充てた。 触っていた頬が熱くなるのを、直ぐに感じれる。
「嫌がる事はしないって言ったのに…」
「嫌だったか?」
「嫌ッ!…ではないけど…」
何だよ。素直になればいいのに。
「ねぇ…そろそろしなきゃね…」
「おお。嫌がっている割にはノリノリじゃないか。そろそろと言わずに今すぐにでも」
冗談で彼女のパジャマに手をかけたつもりが、力強い鉄拳が頬に飛んでくる。 …全くアンタはいつか本当に暴行罪で訴えられるぞ?
「そういう話じゃなくって、去勢の話よ。そろそろしなきゃねって」
「ハァッ?!何故俺が去勢されなくてはいけないのだ!何も犯罪も犯してないし、女性には真摯に接してきているつもりなんだが?」
「ハァーーー…。アンタって本当に天然?
アンタの話でなくって、雪の話よ」
「あぁ何だ…雪の話か。びっくりした。俺は可哀想だと思うけれどな。せっかく雄に生まれてきたってのに1回も使わずに人間に身勝手に手術させられるなんてさ。
大体雪の子供は絶対に可愛いはずだから、美しい猫と交配させて雪2号を作ってもいい」