【完】淡い雪 キミと僕と
12.美麗『わたしそんな幸せそうな顔をして笑っていた?』

12.美麗『わたしそんな幸せそうな顔をして笑っていた?』




ショートスリーパーと言っていた話はやっぱり嘘なのだ。

朝になってアラームが部屋中響き渡り、カーテンの隙間から燦燦とした朝日が差し込んできても、彼は全く起きる気配が無い。

それどころか、わたしを抱き枕にし、身体に絡まった両腕はかなりの力で外れそうもない。 それでもこの体温に身を委ねる事は、彼を好きだと気づいてしまった今、幸福なのだ。とても悔しいけれど、好きな人に抱かれ起きる朝はこんなにも気分が良い。



彼の腕の中、覗き込むように顔を見上げる。

邪気の全くない、偉く純粋な寝顔だったと思う。口を開けば悪態をつきわたしをからかってばかりの癖に、眠っている姿はそれに反してとても幼い。

頬にゆっくり触れると僅かながらぴくりと痙攣して、そして細い一重の瞳をゆっくりと開ける。

まだまだ寝ぼけ眼。けれどジーっとわたしを見つめ、そして自分の方へ引き寄せた。

何がどうして、こうなってしまったかは定かではない。

昨夜突然飲み会の場に呼ばれ、六本木のルナという会員制のバーに行った。そこには友理奈も居て、友理奈から西城さんとの関係を告げられた。

…わたしは彼女からそれを聞いた時、酷くショックを受けた。

そして何故か彼がルナまで乗り込んできて、無理やりマンションまで連れて来られた。そして何故かいきなりベッドに押し倒され、無理やりされそうになった。


< 356 / 614 >

この作品をシェア

pagetop