【完】淡い雪 キミと僕と

「祖父と篠崎社長が乗り気なだけだ。しかし面倒くさい。
今度父親同士も呼んで一緒に食事など……」

父親同士も呼んで。それって着々と結婚の話が進んでるって事じゃない。結局はわたしの知らないところでよろしくやってんのね。

あぁ全く食欲がない。さっきまで美味しいと感じていたのに途端に吐き気がこみ上げてきそうだ。

胸がモヤモヤする。ソファーからジャンプして降りた雪がわたしの目の前へやってきて「みゃあ!」と大きな鳴き声を発した。

ねぇあんたはどうするの?西城さんは結婚してしまったら、あんたにはきっと会いに来なくなる。そうなったら寂しくないの?

訊くだけ無駄か。この子は誰にだって懐く子だから、西城さんの代わりはパパでも誰でも良い。

その前に雪は彼の猫だから、もしかしたらあっちに引き取られてしまうんじゃないか…。

それをきっと雪は寂しくは思わないだろう。西城さんの代わりがいるように、雪にとって甘える相手がわたしであろうが菫さんであろうが変わりはない。

「おい、アンタやっぱり具合いでも悪いんじゃないか?顔が真っ白だぞ…?」

「え…?」

そう言えば、身体はダルイし、胸はムカムカするし、お腹が少し痛いような気もする。何より気持ちが悪い。

「気持ちが悪い…。それに少しお腹が痛い…」

「まさか…!!」

何だよ。

「妊娠か?!」

馬鹿じゃないの?

妊娠するわけない。いや、妊娠したからと言って、こんなに直ぐに症状が出てたまるもんか。


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