【完】淡い雪 キミと僕と
「おう、相変わらず声がデカいな。今平気か?」
「今日はね、仕事が休みなの!だから家でボーっとしてるよ。ハルがね、休日出勤なんだって~。せっかくハルに合わせて土曜日休みにしたのにさぁ~」
よく喋る女だ。
声の主は、琴子。 俺が好きだった女だ。
現在は猫カフェで働いていて、井上晴人と同棲している。
’井上晴人’の彼女だという事は今でも癪に障る。しかし振った男にでもあっけらかんとした態度を取る琴子にはいつまでも好感が持てる。
「そうか、それは休みの所悪いな。ちょっとだけ琴子に相談があってな」
「相談~?大輝から相談って何か怖いなぁ~…。」
「実は俺な、好きな女が出来て」
「えぇえええええええ?!」
また、携帯から耳を離す。だから鼓膜が破れてしまうと言っているではないか。どうしてそんなにデカい声を出すというのか。
こいつは昔からハイテンションな奴だった。俺のちっぽけな悩みを豪快に笑い飛ばすほど。
「告白しようかと思っているんだ」
「ひぇええええ?!」
「お前、さっきからリアクションがうざいんだが…。つーか声がデカいッ!」
「アハハ~。ごめんごめん。で、相談ってそれ?」
「悪いか?告白をしようったって相手がどう考えているかはいまいち分かんねぇんだ。全く何を考えているか掴めん。
でも俺は相手の気持ちどーのこーのはあんまり関係ないから、好きだと気づいたからには告白はしようと思っている」
「大輝ってそういう人だよねー。いいじゃんいいじゃん。」
「それでだ、どう思う?」
「何が?」
「相手は俺が好きだと思うか?」
「え、そんなの知らないよ。だって相手の女の子の事知らないし…あたしに訊かれたって困るじゃん。でもさ、大輝は好きになったら一途だし、好かれた女の子は幸せ者だよねッ!」