【完】淡い雪 キミと僕と
雪を猫キャリーに入れ、トイレだけは持っていく。猫は自分の匂いがついた場所にしか用を足さないらしいから。
どこでも暮らせるというのに、強い拘りがある。こいつらも俺と一緒で神経質なのかもしれない。
それ以外のご飯はおやつはマンションに常備してある。だから、大丈夫だ。
雪が入っているキャリーを車に乗せ、自宅マンションへ再び帰る。
しかしランチの時間はとっくに過ぎたというのに美麗からの連絡は一切ない。どこで油を売っているのか知らないが、メールの1本くらいは寄こせるろうに。
雪は、突然連れて来られた家にビビりもせずに様々な場所を探索する。
何分広すぎる家だ。後ろから着いて回る。お風呂に落ちて大理石に打ち付けられたら困るし、トイレの中に落ちてしまっては大変だ。猫の運動能力を舐めている訳ではないが。
広い室内で、雪も心なしか嬉しそうではある。
しかしこうやって見ると殺風景な部屋でもある。アレをインテリア代わりに置こうか。琴子と井上晴人の家にあったキャットタワーという奴だ。
あれは猫にとってはたまらない物らしい。
あいつらの家にあったのより豪華な奴を買ってやろう。
美麗の狭いマンションじゃあ置けないので、家に。けれどもし振られて、雪に会える日も少なくなってしまったら買った意味もなくなってしまうな。
一通りマンション内を探索した後、雪はソファーに座る俺のお腹の上へやって来た。
幾ら広い場所であっても、ここが定位置らしい。連れてきたばかりの頃などお腹に乗っても全く重みなんて感じなかった。けれど少し成長した雪は、ずしりとした重みがあり、少し貫禄が出てきた。
美麗はいつも人間用の体重計に雪を乗せている。猫用のを買ってやろう。定期的に測って雪の健康の事も考えてあげなくては。だってこいつはご飯を食い過ぎだ。