【完】淡い雪 キミと僕と
美麗のマンションに泊まり、彼女を抱きしめながら眠った夜。
8時間一度も目覚めずに眠ったあの夜。けれどそれからは泊っていない。毎日のように家には行っていたが、夜も更ければ自宅マンションに帰って来ていた。
自宅のベッドで眠りに着くと、やっぱり睡眠は3、4時間しか取れない。
温かく柔らかい雪を抱きながらソファーに眠っていると、ふわりと気持ちの良いまどろみが襲ってきた。
そしていつの間にか、眠りに落ちていた。
ぺろぺろと顔を舐める雪のざらざらとした舌先で起きた時には、もう陽も沈みかけていた。
大きな窓からオレンジ色に染まった夕陽が溢れ出して言って、東京の街全体を包み込んでいる。
普段は外なんて夜の夜景くらいしか見ないもんだから、たまにはこういった景色も良い。そう思いながら携帯を開くと時刻は17時ちょっと前。美麗からの連絡は相変わらずなし。何をやっていると言うのだ!?
たまらず携帯を手に取り、電話を掛ける。
無視されるかとも思ったけれど、意外に彼女は直ぐに電話に出た。惚けた声を出して。
ガヤガヤとした外の音が微かに電話越し聴こえた。…どこにいるんだ?!
「え、何よ?」
「何よ、じゃない。今はどこだ」
「今は新宿だけど…?」
「新宿で何をしている!」
「だから今日は、会社の後輩とランチに行くって言ったわよね?!」
「もう午後の5時近くだが、アンタのランチはこんな時間まで続くのか?」