【完】淡い雪 キミと僕と

「今入り口のロックを解除するから入れ」

「てゆ~かすっごいね…。想像以上だったわ…。
キャッ!これ入っていいの…?」

「構わん。入れ。」

「ねぇ…フロントに人がいるけれど…どうしたらいいのかしら…。」

「別にそいつは無視して構わん。マンションの住人の小間使いみたいなもんだ。」

「小間使いって…もっと言い方があるでしょう?」

「エレベーターのロックもこちらで解除したから乗れ。部屋番号はラインに書いてある通りだ。じゃあな」

「ちょっ!」

一方的に電話を切り、慌てて洗面台にまで行き、髪型のチェック。

洗面所の大きな鏡に、いつもと変わらない完璧な自分の姿が映る。

目糞ついてねぇな?まぁ美麗じゃあるまいし

「井上晴人なんかより俺の方がよっぽどかっこいいと思うがな」

自画自賛して、少しだけ虚しくなった。

結局琴子も美麗も実際に好きになったのは、あいつの方だったから。 俺の好きになる女は、誠実な男がタイプらしい。

数分後、部屋の前にあるインターホンが鳴った。ソファーに寝ていた雪も俺に続きダッシュで玄関へ駆けていった。


重く頑丈な扉を開けたら、そこにはアホ面した美麗が突っ立っていた。

ドアが開いた事に気づくと、一直線に膝を折り「雪~」と雪を先に抱きしめた。おいおい無視かよ。

それにしても、今日はなんかやけにお洒落をしていないか?

可愛らしいベージュのワンピースに薄茶色の薄めのショートコートを羽織って、髪なんてくるくる巻いちゃって、化粧もなんだかやけに濃くないか?

訝し気に美麗の顔をジーっと見つめていたら、口をへの字にして不機嫌そうに「何よッ」といつもの口癖を言った。


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