【完】淡い雪 キミと僕と
「美麗……好きだ」
一瞬時が止まったかのような感覚に陥った。
口をぽかんと開け、眼を大きく見開いた美麗は数秒その状態で、一瞬動かなくなってしまったのではないか心配になるほど。
直ぐに君をどうしようとは考えていない。少しずつで良い。俺の事を恋愛対象として見ていってくれないか?
「あの……」
振り絞って出したような声は、少しガサガサでハスキーになっていた。
「いいんだ。俺はアンタが井上晴人を好きだったのは十分知っている。
だから少しずつでいい。俺の事を好きになっていって欲しい。
少しでも望みがあるのならば、気持ちに応えて欲しい。」
ちょうど、東京タワーが点灯し始めた。遠くに赤い光りが見える。
美麗はぼんやりとその光りを見つめ、その大きな瞳は僅かに潤んでいるようにも見えた。
答えに迷っているように、感じた。迷っているのならば、少しでも望むがあるというのならば、これからも同じ景色を見ていきたいと思っている。
柄にもなく、神様に願っている自分がどこかにいた。神など信じぬ男が神頼みなど
今になったらとても笑える。