【完】淡い雪 キミと僕と
もう諦めてしまおうと思った。気持ちに鍵をかけて、なかった事にしても彼の側にいられるのならば、と。
それどころか自分を好きになってくれる人を探そう、だとか。近くにある好意に甘んじようとしていた。情けなく、ちっぽけな自分。
どんなに惨めであったとしても、自分だけは自分を見捨てない。と決めたのに…わたしはまた、自分の気持ちを見捨てようとしていたのだ。
「ごめん…泣くな。アンタに泣かれるのは弱い…。分かっている。君がもうお金ではなびかないような女だとは。
別に自宅を自慢したかった訳ではない。俺の事を少しでも理解して欲しかったというか…。まぁこのマンションを見れば、少しは俺を見直し好意を持ってくれるかもしれないといった邪な気持ちは少しはあった…。
それに…告白をする前に君を抱いてしまって申し訳ないと思っている。確かにあの日の俺はどうかしていたが、現在好きな気持ちは嘘ではないんだ」
言い訳染みた事を、つらつらと並べるタイプではない。
こんな風に困った顔ですら初めて見る程、いつだって西城さんはわたしの前では余裕綽々な人間で、振り回されているのはいつだって自分ばかりだと思っていた。
「違うの…」
「違う?」
「この涙は、そう言った物でなくって…
少しだけ混乱をしてしまって…」
涙を拭った西城さんは不安そうな顔をしていた。