【完】淡い雪 キミと僕と
「ふっ…」
「何を笑っている。失礼だぞ、アンタ。人が真剣に告白をしていると言うのに…。
しかもだ!よりにもよってアンタになんか好きだと言わないといけない俺の屈辱感が分かるかッ?!
そして100歩、い~や1000歩…いやいや10000歩譲って井上晴人のような男に少しでも寄せてやろうとしてる俺の心優しき配慮が伝わらんか?
あんな男に寄せようとするのは、寒気で震えあがる程嫌なのだが。
それを妥協してやる程にはアンタが好きだって事だぞ?!」
「アンタ失礼よ。井上さんの悪口はそれまでよ。それにわたしはアンタが井上さんに寄せようとするなんて少しも望んでないわ。
整形なんてもっての外よ。わたしは井上さんの見た目を…いや、確かに彼の顔はわたしのタイプなのだけど…顔で好きになったわけじゃないの」
「じゃあッ!どこをどう直せばいいって言うんだ」
「どこも直さなくていいわ…」
素直じゃないこの人の、精一杯の気持ちの伝え方。不器用にでも、真っ直ぐに伝えてくれたのが、本当に嬉しかったの。
だからわたしも柄じゃないけれど、ほんの少しだけ素直になる。
西城さんを強く抱きしめたら、彼の動きはぴたりと止まり、ふたりの心臓の音が綺麗に重なった。
「わたしも、あなたが好きよ」
井上さんのようになんてならなくったっていいわ。だってわたしだって、あなたが大好きだった琴子さんのような女にはなれない。