【完】淡い雪 キミと僕と
ぱっちりとした二重じゃなくてもいいの。
口が悪くても、自己中で我儘でもいい。
あなたの良い所はわたしが全部分かっている。
わたしは全然素直な女じゃないけれど、少しだけ素直になれるよう努力をするから
たまにはあなたもそんなわたしを褒めなさい。望むとするのであれば、それ位よ。

彼の胸に顔を埋めたら、良い匂いがする。

雪からも、良い匂いがする。

好きな人だからその匂いが好きなんだって、今気づいた。


大分放っておかれ過ぎて痺れを切らしたか。

わたしと西城さんの足元では、雪が「ミャーミャー」と鳴きながら、爪を立てる。

ぐるぐると回っては、不満そうにこちらを見上げる。ごめんね、あなたの事は好きよ。でも雪はもっと特別だわ。

西城さんの腕を振り払い、雪を抱き上げる。絶対に文句を言われると思ったけれど、彼は何も言わずに茫然と立ち尽くしていた。

抱き上げられた雪は笑っているかのように口をめいいっぱい開き「ミャー」とわたしへ何かを訴えた。



’美麗ちゃん、美麗ちゃん~良かったね~。
でも僕の事も愛してね~
美麗ちゃん大好きだよぉ~’


くっつけてくる鼻から、お日様の匂いと僅かな獣臭。

やっぱり、あなたの匂いが1番好きよ。


「ねぇ…何ぼーっと突っ立ってんの?」

口をぽかんと開けて、体を硬直させるさまは人の事が言えない程間抜けだ。

ハッと気づき、雪を抱えるわたしの肩を両手で掴んだ。掴んだ途端、茹でだこのように耳まで顔を真っ赤にさせる。

「俺が好きなのかッ?!」

「ハァー?だから好きって言ってるじゃん。ただしアンタは2番目の男だけどね」

いつもは冷静で余裕たっぷりの男をたまにはからかいたくもなる。だっていっつもからかわれっぱなしなんだもの。

そんなの、フェアじゃないわ。


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