【完】淡い雪 キミと僕と
想いが通じ合った後でも、わたし達を包み込む空気は余り変わらない。
それは居心地がとても良く、けれど今までは自分だけが好きじゃないかと悶々として過ごしていた。
けれどお互いの気持ちを確認し合った後直ぐに柔らかい幸福感は安心によく似ていた。
「おい」
「え?何?」
「何をニヤニヤしている。大好きな俺から好きだと言われ浮かれているのがバレバレなのだ」
「うるさい!それより…アンタみじん切りが上手ね」
何故か、料理のレベルが上がっている。
こっそり練習でもしているのではないか?
「暇な時間に動画を見て勉強していたんだ。簡単な事だ。頭の中でイメージをした事を具現化するだけだ」
「わたしは何度見ても出来やしないけどね。えい!えい!」
「おいおい、包丁を振り回すな。そんな力をいれなくとも野菜は切れるもんだ。手でも切ったら大変だ」
そう言って隣で寄り添い、わたしの手を自分の手で重ねる。
キュン、とする。幸せな時間とは、こういうものだ。
綺麗に切れたみじん切りを見せ、得意げに笑って水を口に含む彼はとても満足そう。
「ねぇ、アンタはわたしのどこを好きになったの?」
不意に思った疑問を口にすると、その場にブッと水を吐き出した。
そして顔を真っ赤にさせ「し、知るか!」と怒鳴りつける。そしてまた水を一気に飲み込む。
「わたしは、アンタの面白い所が好きよ」
そう言えば、ぴたりと動きが止まり片手で顔を覆う仕草をする。