【完】淡い雪 キミと僕と

「それに西城さんには婚約者がいるじゃない…」

付き合う事にはなるんだろうけれど、実際問題は山積み。

果たして未来の事を考えて、わたしは彼と結婚出来る身分なのだろうか。

西城さん程の大きな会社の社長令息となれば、結婚すら彼だけの問題ではない筈だ。

それに彼がそこまで考えてくれているとはまさか思っていなかった。

どこかタカが外れたような奴だとは思っていたけれど、まさか付き合ったその日に結婚の話をされるとは。

おもむろに西城さんが携帯を弄り始めて、どこかへ電話を掛け始めた。

「ちょ、アンタどこに電話してるのよ」

鼻の頭に人差し指を充てて、シーっとこちらに向けて合図を送る。

「あ、もしもし菫さんですか?
はい、元気です。はい、今日は菫さんに話があって
ええ、お食事の件ですがお断りさせて頂きます。
はい、祖父にも説明しておきますし、篠崎社長にも話しておきます。
僕には結婚したいと考える女性がいるので、これ以上菫さんとどうなったりとかはありえません。
はい、今日はそれを伝えたく電話しました。はい、はい、では失礼させていただきます」

何、言っちゃってんの…?

それってアンタの一存で決めて良かった事なの?



けれど電話を切った後の西城さんは実に清々しそうな顔をして、’これでアンタの心配事はなくなったろ?!’と寧ろ褒めて欲しそうに無邪気な笑顔を向けた。

嬉しい。嬉しいけれど、本当にそれでいいの?ねぇ、そんな事までされちゃったら…本当に愛されているのかもと錯覚してしまう。

言葉を失い、茫然と彼を見つめると…彼はそれを不服と取ったのか、再び携帯を取り出した。そして、キッチンまでわたしの腕を引っ張り連れて行き


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