【完】淡い雪 キミと僕と
…そして、その最新機種の携帯を
キッチンに落とし、上から大量の水を掛けた。
「あァーーー!!最新機種がぁ!!!!」
それでも、西城さんは満足げに笑った。
「何やってんの?!こんな事して!」
「案ずるな。仕事用の携帯はちゃんとある。それはプライベート用の携帯だ」
「いや、それも大問題だと思うけど……」
ああ、哀れ…。
最新機種の携帯は水に浸り、もう息をしていない。水道水に浸されその生涯を終えようとしていた。
「この携帯の中には俺のセフレや番号交換をしている女の情報が全て詰まっている。
もう俺には、必要ない」
愛されている。
そう実感するのは言葉等ではなく、こうやって態度で示してくれる時。
「だって…それなくなっちゃったら…もう他の女の子呼べないよ?セックス出来なくなっちゃうよ」
「いいよ。アンタ以外の女をもう抱く気はない。
それに俺の体は変になってしまったのだ。頭だけではなく体まで馬鹿になったに違いない。
アンタの貧相で決してそそられはしないような体ばかり求めるようになってしまったのだ。
あぁ…自分の体ながらに憎たらしいったらない…」
だからどこまで失礼なんだ。
わなわなと体を震わせ、自分の両手を見つめる西城さんの顔は青い。
まるでわたし等を好きになってしまい不満だ、と言いたげに。
けれどころりと表情を変えたかと思うと、優しく微笑みかける。