【完】淡い雪 キミと僕と

「明日、新しい携帯を契約しに行こう。
それに美麗ママと美麗パパにも会いに行こう。最近ご無沙汰して会っていない」

「何で…ママとパパに?」

「そりゃあ結婚を前提にお付き合いさせて頂くのだから挨拶は早い方がいい」

「いいって!そんなの。それにまだどうなるか分からないでしょう?」

結婚話なんて…

西城さんがお気に入りのパパとママが聞いたら喜ぶに違いない。ふたりの浮かれる姿は目に浮かぶ。

けれど、まだ半信半疑だった。

だって、一筋縄じゃあいかないでしょう?おじい様は孫の気持ちなんててんで無視して菫さんを婚約者にするくらい、彼女をお気に入り。

勿論それは西城グループの事業にも関わってくる問題で、どう考えたって零細企業の娘なんて歓迎される訳はない。

それを考慮した上で、パパやママをぬか喜びさせて破談になったら目も当てられない。

どうなるか分からない、と言ったら西城さんはまた不機嫌そうにその一重の鋭い眼光をこちらへ向けた。

「それは、別れの日を考えていると言うのか?」

「始まったばかりでそんな事は考えちゃいないけど…。だって実際問題結婚まで大袈裟な話になるとそれはわたし達の問題ではなくなるのよ…」

「では、駆け落ちでもするか?」

「馬鹿なの?」

「俺は美麗がいるのならば西城グループの地位など捨ててもいいが?」

「それは駄目ッ!」

「なんと!やっぱりアンタ…俺の財産目当てだったのか?!」

ため息が止まらない。

たとえ財産目的であるのだとしたら、アンタなんて面倒臭い男と一緒にいたいとは思わないわ。



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