【完】淡い雪 キミと僕と

寝室のデカいベッドを見て、驚き声を上げた。全く間抜けな声だ。これだから一般庶民は。

こんな大層なキングサイズのベッドを見た事はないだろう。フランス製でふかふかなんだぞ。

間抜けな声を上げたかと思えば、キャーと言ってベッドに上がり、子供みたいにジャンプする。

美麗の重みで揺れるベッドの上で、雪が一緒になってはしゃいでいた。雪も喜んでくれたようで結構。


今日美麗と雪はうちにお泊りする事になった。


’泊るつもりなんかなかった’そう言ってお泊り道具を用意していないと文句を垂れた彼女であったが、パジャマは俺のティシャツとジャージを貸してやった(ちなみにどちらもブランド物で、金持ちはたかがジャージもブランドなのね、と彼女は感心していた)

背丈が大分違うせいかそれは美麗にはブカブカだったが、これまたその姿が愛らしいと言ったらない!

化粧水もないと騒ぎ出すもんだから、どこのブランドがいいんだ?と訊ね必要ならばデパートに出向いて買いに行くと言ったが、それは遠慮された。

コンビニで十分だ。と彼女は言った。あなたに言うと本気にして、ハイブランドのラインを一式買ってきそうで怖い、と。

ふん、それの何が怖いと言うのだ。たかだか化粧水や乳液のうんぬん。一式揃えた所で大した金額にはなるまい。そう言えば、金銭感覚がおかしいのよ。とまたどやされた。

貧乏人ではない。

それなりに裕福に育ってきた女だが、驚く程倹約家である。

港区で遊んでいた頃は男から貢ぎ物を貰っていたらしいが、それは近日処分させよう。

それを怒るようであればそれ以上に俺が何でも買ってあげればいい。そう言うと、きっと彼女はまた怒るのだろうが。



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