【完】淡い雪 キミと僕と

う~ん、と頭をひねりながら考え、照れくさそうに頬を赤らめた彼女は言いずらそうに小さな唇を動かし「大輝?」と首を傾げ、丸く大きな瞳を潤ませながら言う。

アンタは分かっちゃいないと思うが、その表情は破壊力がある。

後2日待たなきゃいけないなんて実に残念だ。今すぐ服を脱がせ、可愛いアンタを朝まで苛めてやりたいもんだ。俺はもっと、アンタの色んな表情を知りたい。

そしてアンタさえ知らなかった自分を引き出してやりたい。

「でも、大輝はなんか嫌…」

「何でだよ?!」

「だって…琴子さんも…大輝って呼んでた。同じは嫌…」

そう言ったら少しだけ視線を横にずらし、拗ねたように唇を尖らせる。

…可愛い。クソッ!最新機種の高画質カメラでその表情を抑えておきたい所だ、だが現在携帯はお亡くなりになってしまった。非常に残念だ。

「じゃああだ名なんかをつけてくれ。ほらそうだ、琴子が井上晴人を’ハル’と呼んでいたような素敵なあだ名を!」

「何よ、素敵なあだ名って…。あだ名に素敵も何もないじゃない。
じゃあ’大ちゃん’とか?」

その呼び名はとてもむず痒い。

大ちゃんなんて、幼き頃おばちゃん連中からしか呼ばれた事はない。

大体女には、大輝や大輝くんと呼ばせていた。元々’大ちゃん’なんて柄ではない。

大ちゃんなんぞと呼び方をしてくる女がいるのならば、徹底的にそれを拒絶した。
だが…。


「大ちゃんか…。少々不服だが、良い。許そう」

「でもきっと呼べないと思うわ…。だってわたしの中であなたは西城さんでしっくりしてるから」



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