【完】淡い雪 キミと僕と
「何と!この西城大輝初めて大人になってから許した呼び名’大ちゃん’を拒絶すると言うのか?!」
「もういちいち大袈裟なんだよ。わぁーったよ。少しずつ呼ぶ努力はするからそれでいいでしょう?!」
なんと生意気な!けれど、生意気に目をとりあげて怒る姿も、好きだぞ。
あばたもえくぼとは先人は素晴らしいことわざを残した。
「もう、あなたはほんっとうに面白い人だわ。一緒にいて全然飽きないわ。わたしと一緒にいてくれて、ありがとうね?」
女は、笑うと泣きそうな笑顔になる。泣く時も笑いながら泣く女だからだ。
井上晴人の為や、誰かに傷つけられたり、悲しんでいる時の泣き顔は好きではなかったが、時たま物凄く素直な言葉を吐きながら笑うその笑顔はとても良い。
思わず美麗の唇にキスを落とした。また拒否されるかと思いきや、それに応えるように彼女は俺の背にしがみついた。
君が好きだ―そして初めて互いの気持ちが通じ合った夜を過ごした。
悶々とした気持ちは残ったままだったが、後2日位は余裕で待てる。
「あらあら、あらあら、まぁまぁ、まぁまぁ」
あらも、まぁも相変わらず多い母親だ。
翌日午前中に新しい携帯を買いに行き、その足で山岡家へ向かった。
美麗は車の中で煩い程「嫌だ」と何度も連呼した。「絶対にママとパパに余計な事言わないでよ?」とも釘をさされた。