【完】淡い雪 キミと僕と

自宅に着くと、美麗ママはお昼ご飯を用意してくれていた。

’お好み焼きなのよ、今日は’と用意してくれたそれを、美麗は懐かしそうな顔をして「日曜日のお昼はママがよくお好み焼きを焼いてくれたの」と言った。

お好み焼き。自宅で食べるものなのか。そんなの関西人だけかと思っていた。

美麗パパは俺や美麗というよりかは雪に夢中らしく、節操のない雪はソファーで寝そべる美麗パパにさっそく媚びを売っていた。

…お前のそういう所は嫌いではない。八方美人は悪口ではない。誰にも嫌な気分にさせないお前の最高の愛嬌だ。


どうやら真昼間だと言うのに美麗パパはビールを飲んでいるらしい。黒い肌がアルコールのせいでほんの少し赤黒くなっていた。

「大輝くんも飲もう」

「馬鹿、パパ。西城さんは車なの。運転があるの!」

「いいじゃないか。今日は日曜日だ。それより最近パパは大輝くんに構って貰えなくて寂しいぞ?
もうパパに飽きちゃったというのか…?」

顔が赤いのはアルコールのせい。目が涙目なのは欠伸をしたせい。

ちっとも色っぽくないただのおじさんが、潤んだ瞳で俺に彼女のような事を言う。

面白い人だ。美麗が面白いのは父の遺伝だな。

「すいません。最近土日も仕事がある事が多くって。でもこれからは時間が作れそうです。美麗パパの好きな所に行きましょう」

そう言うと目を輝かせ、わーいわーいと両手を上に上げる。

…アンタは俺の彼女か。いや、俺の彼女はアンタの娘だ。


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