【完】淡い雪 キミと僕と
しかし缶ビールを握り締め、彼は何故か涙目になっている。
そして立ち上がり、何故か俺の前へやってきた。それに合わせるよう、椅子を少しだけ引いてその場に立つ。…俺の方が大分背が高く気まずい。
そして、真っ黒に日焼けしたその腕をこちらへ差し出した。
「大輝くんッ。本当にこんな奴でいいのかい?お前はこんなジジイの遊びにも付き合ってくれる若い癖に中々骨のある良い奴だ。
こちらこそ、美麗を頼む」
握り返したら、強く強く力を入れてきた。背はそんなに大きくない癖に手はごつごつして大きかった。
これは、力仕事を現場でしている人の手だ。かさつきガサガサだが、とても温かい。頑張って家族を養ってきた手なのだ。
「いえ、こちらこそ。よろしくお願いします。
僕は美麗さんと一緒にいると心がとっても安らぎます。彼女以上の人はいないと思っています」
心からの本音だった。
けれど隣で椅子に座る美麗はまるで’なんていう事を…’と言った感じで口を開けてアホ面をしていて、美麗ママは口元を綻ばせて、花のように笑った。
美麗パパは相変わらず涙目でになって、俺の手を何度も握りしめてそれをぶんぶんと上下に振る。
’何か楽しい事してるんでしょ~?’と言った感じで雪が会話に入りたそうに、食卓テーブルの周り動いていた。
何という平和な光景。まさかこの親父がここまで喜んでくれるとは思わなかった。父らしく厳格を出し、あの定番の言葉などでも吐くのかと思った。
’娘をどこの骨かも分からん男と!’って。