【完】淡い雪 キミと僕と
全く馬鹿だな。そんな事を気にして、俺は中々に愛する女の為ならばその地位だって捨ててもいいと思えるほど、一途な男だぞ?
…アンタがそれでいいならばの話だが。
「普通の女の’子’って言い方は図々しいだろう。アラサーにもなろうって女が。それにアンタは普通ではない。大分変わっている」
「アンタと喧嘩する気も今は起こらないわ…。
あぁ、せめて西城がさ…普通のサラリーマンとかだったら良かったのに…。
そしたら家柄とか関係なく…そういうの気にせずに付き合えたのにな…」
小さく呟いたその言葉に、少しだけ嬉しくなった。
つまりは美麗は、西城グループの一人息子だから俺を好きになった訳じゃないと解釈していいという事だろう。
「アンタはそう言ったもん気にしなくていいと何度言えば…」
「でもさ」
美麗が何かを言いかけた時、胸ポケットにいれておいた携帯が鳴り響いた。
今日新規契約してきたばかりだぞ?と思ったけれど、生憎仕事用の携帯が鳴った。
電話の主は、これまた珍しい人だった。
「はい。えぇ今は都内にいますけど。はぁ…。そうですか。では今から会社へ向かいます」
父からの電話だった。何でも祖父が話があるそうで、会社に呼んでいるらしい。せっかくの日曜日だと言うのに…。
そして祖父からの呼び出しの用事は何となく想像が着いた。
「何?仕事…?」
美麗は少しだけ不安そうな顔をした。 出来るだけ不安にさせぬよう、彼女のおでこに軽くキスをした。
おでこにキスをした位で真っ赤になる彼女を、とても愛おしく思う。