【完】淡い雪 キミと僕と
「あぁ、ちょっと父親から呼び出された。それに今日は少し会社で仕事をしたいから家には行けないと思う」
「そう……」
しょんぼりと眉を下げ、視線を落とす。
だからそんな寂しそうな顔をされたら、毎日だって押しかけたくなるってもんだ。
けれど、夜中にマンションに行って、眠っている君を起こしたくはないんだ。君にだって仕事はあるだろう?
「俺が来ないと寂しいか?」
「えぇ…そうね。今日も日曜日だからもっとゆっくりと過ごせると思っていた。
でも仕方がないわね、仕事だもの。本当はわたしよりずっと忙しいのに、今まで時間を作ってくれていたんでしょう?
わたしの事は気にしなくていいからね。あなたの仕事の邪魔だけはしたくないわ。それにつき…付き合ってるのよね?わたし達。それだけで安心できるから」
美麗の笑顔は、いつも泣きそうな顔。
可愛げのない事を言ったかと思えば、ごくたまにとてもいじらしい事を言ってくれる。
そんな時は彼女を抱きしめたい気持ちでいっぱいになる。
そっと彼女を抱きしめると、花のような笑顔を顔いっぱいに綻ばせてこちらへ微笑みかけた。
「大丈夫。明日から仕事が終わったら毎日でも行くよ。アンタがうちに来たって構わない。あぁそうだ、うちの合鍵も作っておこう」
「そんな…いいよ…」
「だって俺はアンタの家の合鍵を持ってるけど、アンタは持ってないじゃフェアではない」
「ぷっ。何の争いなのよ、それは……」