【完】淡い雪 キミと僕と
14.美麗『いきなり旅行に行くなんて強引だと思うわ。』
14.美麗『いきなり旅行に行くなんて強引だと思うわ。』
彼の思いなど知らずに、浮かれまくっていたと思う。
約束通り毎日のように家にやって来てくれて、夢のような生活。
ほぼわたしの家で過ごした。ふたりで雪と遊び、一緒に料理の本を見て夕ご飯を作って、一緒に眠る。
彼は飽きもせずに、毎日のようにわたしを抱いた。…その時間はとても幸福な物だった。思い出してもニヤケてしまう程、西城さんはわたしを大切に扱ってくれる。
幸せとはこういう事を言うのね。
「…さん!
山岡さんったら!」
頬杖をつきながら宙を見上げていると、千田ちゃんの片方の手が視界に入って、それを縦に振っている。
慌てて背筋を伸ばし、彼女の方を向く。
「どうしたんですか?ボーっとしちゃって。」
「え?!いや全然、さっ仕事仕事」
「山岡さんったら変なの。全然わたしの話を聞いてくれないし…」
「え?ごめん!なんだっけ?」
「だから、雪村さんの事ですよぉ~」
雪村さんとは取引先の方で、千田ちゃんの想い人だ。
この間の休日も彼女とランチして、恋の相談に乗り、その後に新宿に行って、デートの洋服選びを手伝った。
彼女が手に取ったのは控えめだけど女の子らしい、白いワンピースだった。それはとても彼女の雰囲気に合っていて、お似合いだった。
「どうだったの?デート。上手くいった?」
「わたしったら自分から告白してしまって…。山岡さんから告白は男性の方からさせるものよ、ってアドバイスを頂いたと言うのに…」