【完】淡い雪 キミと僕と


大した恋愛経験がない女が偉そうに、よくも言えたものだ。

先輩らしいアドバイスをしようとしたら、それは港区で培ってきたものでしかなかった。

自分から告白するより相手にさせる方が後々優位に立てるから、なんて…どこか港区が抜けきらない自分がいたのだ。

「そうしたら雪村さんも僕も言おうと思っていたところなんだって、お互い笑ってしまいました」

幸せそうに顔を綻ばせて笑う彼女と、両手を取り合って喜んだ。

キャーキャーはしゃいでいると、来客が来て不審そうな顔をしてこっちを見られた。

改まって来客の対応をした後、こっそりと千田ちゃんに耳打ちをした。

「実は…わたしも、彼と…」

「えぇ?!」

「付き合う事になったの。先週から」

「本当に?!すっごい!良かったですねぇ~。えぇ~だって絶対彼は山岡さんの事好きだと思ってたし、てゆーか山岡さんの事好きじゃない男性なんていませんよぉ~」

そうなのだ。

先週ランチをしていて千田ちゃんの恋話を聞いてる時、ついつい自分の恋話も口からぽろりと出てしまったのだ。

勿論彼は、西城グループの一人息子だとは彼女に言っていない。その部分だけ省き、今までの経路を話した。

そうしたら千田ちゃんは’絶対に彼も山岡さんが好きですよ!’と力説した。

そしてこれから彼と会うと言ったら、一緒に洋服を選びましょうと新宿に出向いたのが、先週の土曜日の事だった。

まさか、あの日に西城さんから告白されるなんて夢にも思わなかった。


< 429 / 614 >

この作品をシェア

pagetop