【完】淡い雪 キミと僕と
これは夢?しかし何度目を擦った所で目の前にいるのは、間違いなく佐久間さんだった。
もしかしてわたしに会いに来た…?彼からは友理奈伝いでラインが着ていた。けれど友理奈と繋がりがあるのも嫌だったし、嵌められているのかさえ疑った。
そもそもわたしは西城さんが好きだと認識していたから、返事のひとつも返さずにラインはブロックした。
だから顔を合わせるのは非常に気まずい。会社は教えた筈だ。…けれどまさかここまでやって来るとは思わなかった。
「今日は、美麗ちゃんに会いに来てさ」
「へ?」
「だって美麗ちゃんったら、俺のラインブロックしただろう?相当ショックだったんだからね。
だからわざわざ会社まで出向いたって訳さ」
「ここここ困ります…」
そこまで話したら佐久間さんは大笑いして、持っていたハットをくるりと指で回した。
「なんて冗談だけど。
今日はお仕事で会社に伺わせて頂きました。
商品開発部の早瀬さんをお願いしていいですか?S.A.Kの佐久間と伝えてください。今度うちのファッションブランドから、歩く人のコラボティシャツを出す事になって、その打ち合わせに来たんだ。
まぁ美麗ちゃんの顔も勿論見たかったけど、会えて良かったよ」
’歩く人’はうちの看板キャラクターだ。
創業当初から看板に掲げられている。日本の子供は皆このお菓子を食べて育った、とお腹に優しい乳酸菌だかが数億入っているという、うちの看板商品。
そのビスケットのパッケージにもなっている。そのキャラクターは日本全国の人が知っているし、他社とのコラボ製品が発売される際は必ず歩く人が起用される。
だから今うなぎのぼりのファストファッションブランドS.A.Kとコラボしたって何ら不思議な話ではない。というか、佐久間さんはそんな仕事まで自らの足で他社へ出向くのか。