【完】淡い雪 キミと僕と

帰り道。

ラインに何を送ろうか迷った挙句、考えるのを放棄したわたしはスタンプひとつだけ送った。

馬鹿にしている。けれど文章が全く持って浮かばなかったのだ。取り合えず、ブロック解除しましたよアピールだ。早瀬さんには何も言わないでねーとスタンプで圧をかける。

…効いているかどうかは別として。

ぴこん、と直ぐに通知が着て驚きの余り肩が上がる。

『遅い』

連絡は、佐久間さんからではなく、西城さんからの物だった。

び、ビビった。

もうマンション前までは着いているから、返信はせずに彼の待つ家まで急いだ。
しかし何故か家に着くと玄関で仁王立ちになり、腕を組んでいる。

手に猫じゃらしを持って。
下から雪が遥か上で揺れる猫じゃらしで飛びつこうと何度もジャンプしている。

「あ、ただいま。
何よ、そんな所で突っ立って」

「何故返信をしない?遅いと送った筈だが?」

「はぁー?もう家に着くから別にいいでしょう。
あ~雪ただいまぁ~、猫じゃらしで遊んであげてるの~?偉いね~?」

「誰がッ。俺が雪を遊んでやってるんだ!
全く、返信は1分以内に行え。誰かにでも襲われたかと心配した」

背中を向け、ぷんぷん怒りながら部屋の中へ入っていく。心配性が過ぎる。でもそんな所も可愛くって、思わず背中に抱き着いた。

暖かい温もりと、彼の匂いが鼻を掠める。

「何だ、全く。発情しおって」

ひょいっと西城さんが体を持ち上げ、ベッドまで運ぶ。

ベッドに降ろしたかと思えば、カーディガンのボタンをひとつひとつ外していく。

容赦もなくわたしの鉄拳が彼の頬へと飛んでいく。



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