【完】淡い雪 キミと僕と
だから何故に、わたしより先にママが旅行の話を知っていると言うのだ。
大体にして失礼じゃないか?そりゃあわたしだって西城さんとクリスマスを過ごすつもりだった。
意識はしていなかったけれど、どこに行こうとか何をしようとか考えるのも共に過ごすクリスマスの醍醐味って奴ではないか?
それをどうだ?勝手に旅行に行くと決めて。わたしの有無も聞かずに。…いや、旅行は嬉しいんだけど。
「それで旅行ってどこに?」
「北海道だ!アンタ行きたいって言ってたよな?!」
子供みたいに目を輝かせた彼が、携帯を差し出してくる。
画像の中には、お世辞にも高級ホテルとはいえないけれど、雰囲気の良さそうなこじんまりとした旅館。
彼がチョイスした場所にしては珍しいと思った。
夢かぐら、公式ホームページと書かれたそのサイトには、可愛らしいタッチで描かれたキタキツネの絵と共に旅館の情報が載っていた。
スクロールしていくと、雪原の中の露天風呂はとてもロマンチックだったし、日帰り入浴も出来る、地元のお客様からも愛されている温泉です、と書かれていた。
やっぱり意外。彼が旅行でこういった類の場所を選択するのは
下までスクロールしていって、とある箇所で手を止めた。そのわたしの様子を見て、彼はまたニヤリと笑った。
「やっぱりアンタはその場所で手を止めると思った」
「何よッ!人が食い意地張ってるみたいに言って!」
心温まるお料理を目指しております。そう書かれたページには、今にも涎が出そうな美味しそうな北海道の海の幸山の幸が並んでいる。