【完】淡い雪 キミと僕と
結婚と恋愛は切り離して考えるべきだ。そういう想いはいつだって頭の片隅にあった。
…けれど、俺は西城グループの為に生まれた訳じゃない。そうであっても切っても切り離せない物が目に見えずともどこかにあった。
自分の生まれた星の下、これ程恨んだ事はなかった。
「遅い」
車に乗った途端文句を言った美麗は、真っ赤にさせた両手にふぅふぅと息を掛けた。
思わぬ形で菫と出会い、話をしてしまったもんだからすっかりと迎えが遅くなってしまった。
「それにしても、寒いったら。マフラーは持ってくるべきだったわ…。
それより西城さん、満足感のあるカロリーが少ない物は買って来てくれたのかしら?」
’わたしはまだ、あなたを諦めるつもりはありません’と言っていたな。
嫌な予感しかしないのだが。彼女と祖父は繋がっている。何かが起こりそうな予感しかしない。
「西城さんってば!!」
赤信号で止まり、美麗の声が車内に響いた。
さっきまで不機嫌そうに迎えが遅いと怒っていた筈が、心配そうに顔を覗き込む。
「あ…あ、すまない…。夕飯はまだ買っていないんだ…。
帰ろうと思ったら、突然仕事がたてこんでしまって…」
「そんな事はどうでもいいけど、どうしたの?何か様子が変よ?何かあった?」
中々に人の気持ちに敏感で、俺の様子が変なのに直ぐに察知して、気を遣う。
こんな時はいつものように憎まれ口を叩いてくれた方が楽ではあるのだけれど、彼女は実はとても優しい人だから。
だからこそ、彼女にだけは心配をかけたり、不安な気持ちにはさせたくない。
祖父が反対をしているなんて知ってしまえば、俺の家の事情を口にすれば、きっと身を引いてしまうような、気の弱い女だ。