【完】淡い雪 キミと僕と
「何でもないよ」
「うっそだぁ~!絶対変だもの!どうしたってのよ」
「別に何でもないよ。仕事で疲れているだけだ。
それより夕飯はどうする?牛丼でも買っていくか?」
「牛丼?!高カロリーじゃない?!」
「アンタだけ野菜でも食ってろ」
「ひどーい!お腹空いてるって言うのにッ食べるもん!牛丼ッ」
「そんなに太りたくないのならば、小にすれば良い。サラダもつけて」
「小じゃお腹いっぱいになんないもんッ」
「満腹中枢が血糖値が上昇を察知するまでには、20分かかるという。
だからそれまで我慢するかゆっくり食事を取るべきだ。アンタは目の前の欲求に忠実すぎる。少しは我慢という言葉を覚えた方が良い」
屁理屈。と怒鳴られ、頬を膨らませる。
不安な気持ちになって心配を掛けるよりは、怒っている方が全然マシだ。
結局その日は牛丼を買った。あれだけ言ったと言うのに、美麗は牛丼の大をチョイスした所を見ると、やはりダイエットは口だけなのだ。
サラダ食べるもん、と言ったけれど、いつものように早食いをするのであれば、余り意味はない気がする。
家に帰ると待ちくたびれたと言った感じで、雪が玄関までお迎えに来ていて、美麗と俺へ交互に媚びを売り、すり寄ってきた。相変わらずの猫だが、もう留守中もゲージはいらない程大きくなった。
猫は犬よりよっぽど賢いらしく、隼人の家のチワワのように遊び道具がその辺に転がっていたとして、誤飲もしないようだ。
…いや、雪は特別に頭の良い猫なのかもしれない。そう言えばまた猫馬鹿だと笑われそうだが。