【完】淡い雪 キミと僕と
「信じられないわッ」
さっきまで可愛い喘ぎ声を出していた女とは思えん。
真っ赤にしていた顔を真っ青にして、頭を抱える。
知らん顔してバスタオルで彼女の濡れた身体を拭いていると、「何か言いなさいよッ」とまた悪態をつく。
「何が気に入らなかったと言うんだ?…あんなに気持ちよさそうに俺にしがみついていたように見えるが…?」
「うるさいわッ!お風呂の中でこんな事をするなんて…信じられないって言うのよ…。しかもつけてもくれなかったし…どうしたらいいのよ…もしも…」
あぁ、成るほど。
避妊を怠った事を怒っているのだな。
しかしそれもまた湯の中での出来事。仕方がないではないか。風呂に避妊具を常備していないアンタが悪い。
別に避妊云々の話はどうでもいいのだが、出来たらどうぞ産んでくれ。きっと美麗に似れば、男の子でも女の子でも可愛いだろう。
そう思うこと自体今までありえなかったのだ。
俺は、子供等欲しいと思った事は一度たりともない。
虐待して育ってきた人間が、子供をまともに愛せるとは思えなかった。だから、生涯子供を持つ気は無かった。だから今までだって女とそういった行為をする時は必ず避妊をしてきた。
けれど美麗と出会って、君と一緒ならば、俺は大丈夫だと思えたんだ。
それどころか、憶病な自分は美麗を繋ぎとめるために、それを望んでいた節もある。それくらい本気で、それくらい手放したくない人だった。
子供さえ宿れば、あのクソジジイも何も言うまい。と甘い事も考えていた。
身体を拭いてやって、髪まで乾かしてやったのに、まだ美麗は浮かない顔をしていた。