【完】淡い雪 キミと僕と
彼は毎日のようにわたしを抱く。何度も何度も―。
わたしも、わたしでそれを悦んでしまうから、自分ははしたない女なのだと自分に幻滅してしまったが、西城さんはそれは普通の事だと言う。
悔しいけれど、認めたくないけれど、彼に抱かれるのはとても気持ちが良い。
わたしは男性経験が西城さんしかないから、誰とも比べようはないのだけど、彼の手が唇が舌先がわたしの身体を撫でるように触ると、どうしようもない程自分の思いとは裏腹に感じてしまうのだ。
そして何度も何度もシて欲しい等と、はしたない事を考えてしまう。
痴女にでもなってしまったのではないかと不安になった。でもそれを自然な事だと言い、彼から愛してるや好きだと何度も繰り返されたら…もうこの身体から離れられなくなるのでは、と不安になった。
昨日だって…まさかお風呂であんな事を…。
子供が出来たらどうするつもりなんだと怒れば、全く悪びれることなく産めばいいと言ってくれた。
正直嬉しかったし、愛されていると実感は出来た。
…けれど、昨日の彼の様子は少しだけおかしかった。まるで何か考えているかのように、わたしを抱いた。少しだけ不安が募る。
でも、朝起きたらいつも通りの彼だったし、今日もパパと一緒に遊びに行くんだと張り切っている。だから、昨日の事は気のせいだったと思いたい。
西城さんにマンションまで送って貰い、彼はパパを迎えに行った。
雪も彼も居ない空間は、ぽかりと穴が空いたような少しだけ寂しい空間。もう冬のせいだろう、窓から隙間風が入ってくる。テーブルの上に置いてある暖房機のリモコンに手を掛けると、静まり返った空間に室外機の音だけがゆっくりと響いた。