【完】淡い雪 キミと僕と
ソファーに寄りかかり、ゲームのアプリを開こうとしたら、それと同時にラインのメッセージを一件受信した。
『今何してる?』
大いにため息が止まらない事案がもうひとつ。やはりブロックを解除すべきではなかった。
メッセージの相手は佐久間さんで、スタンプひとつの素っ気ない返信にも関わらず、彼からは頻繁に連絡が来る。返事を返さずとも、来る。
けれど、もしも佐久間さんの口からわたしと西城さんが付き合ってるなんて、早瀬さんの耳にでも入ったら……。きっと歩く週刊誌の早瀬さんの事だから言いふらすに決まっている。
そして社内の目ざとい女子社員にありもしない噂を立てられるのは目に見えている。
’あの山岡が西城グループの一人息子に手を出した!’なんて陰口を叩かれるに違いない。わたしだけならば、まだ良い。
西城さんは立場のある人。絶対になんらかの形で迷惑をかけてしまう。
…けれど佐久間さんと連絡を取っているなんて言ったら、その方が彼の逆鱗に触れそうではあったけれど…。
『今からゲームをするので』
『何のゲーム?俺もゲーム好きだよ。
それよりも家にいるの?』
『家ですけど…』
『休日だけれど彼とデートではないの?』
まさか彼は、自分の父親とデートだとはさすがに言えまい。
『さー?仕事ではないんでしょうかね。佐久間さんが思っているような関係ではないですッ』
この期に及び、まだ西城さんとの関係は隠しておきたかった。
もう、返信はしないでゲームをしよう。そう再びゲームのアプリを開こうとした時だった。