【完】淡い雪 キミと僕と

「何よ」

「いや、美麗ちゃんのそんな風に笑った顔って初めて見たかもなぁって」

「はぁ?!何言ってんの」

「出会った頃のアンタはさ、すっげーギラギラしてたよ。獲物捕まえたるーッ!って。
高収入!高学歴!エリート!みたいな感じでさ。
作られた笑顔はとっても不気味で、張り付けられたお面みたいでさー
この子、本当に笑ってないんだなぁーって、その場しのぎで自分の中にある最高の笑顔を作ってるんだろうなぁって
アンタの昔の笑顔は相当可笑しかったぜ」

「うるさいなぁ、鏡で何回も練習してきたんだから
どうやったら男が好きな笑顔が作れるかって
毎日毎日鏡に向かってこの角度は駄目、この角度は中々良いじゃんって研究に研究を重ね…」

そうして、わたしに夢中になる男は数多くいたわ。

「いや、俺が言ってるのはそういう笑顔じゃなくて
心からも面白くて自然に出てくる時の、アンタの笑顔は…なんだ、アレだ
中々良いって話だ」

不意打ちの言葉はずるい。

体が蒸気していくのが分かる。手足がじんわりと温かくなっていって、頬に赤みがさしていく。
心臓がトクンと波を打つように煩くて、そんな感情は全然自分らしくなくて

照れ隠しで、西城さんのお腹から猫を奪って両手で高い高いをする。


’かわいいよ、かわいい、美麗ちゃん’


頭どうかしちゃったかな?猫の声が聴こえてるような気がするなんて。

全く猫なんて大嫌いなのに、そんな何もかも信じ切っちゃって、全てを委ねてくる仕草を見せられたら、尖っていた心が丸くなってしまうじゃないの。

わたしの顔に鼻を近づけてクンクンと何度も匂いを嗅いで、幸せそうな顔をする。

まるで’美麗ちゃんだいすき’って言ってるみたい。


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