【完】淡い雪 キミと僕と
「美麗ちゃんって案外疑り深いんだね。
でも友理奈ちゃんとは本当に友達だし、男女の関係も一切なくって、俺が美麗ちゃんを見かけて一目惚れしたのは本当でさぁ。
友理奈ちゃんが何となく美麗ちゃんに嫉妬してライバル心を抱いちゃってるのは分かるんだけど、それ俺には関係ないし。」
「そうですか…。それならいいんですけど、でもあの…わたし、佐久間さんとは本当に会えませんし連絡も取れませんッ!」
もしも佐久間さんとこうやって連絡を取っているのが西城さんにバレたら、彼は怒り狂うに違いない。独占欲が強く、嫉妬深い男なのはもう理解していた。
それどころか、佐久間さんの会社まで乗り込みに行き、彼に迷惑をかけてしまうのでないか。そういった所も心配だった。
「それはやっぱり西城さんがいるからでしょ~?」
「……」
途端に無口になると「わっかりやすいなぁ~」とクスクスと笑う佐久間さんの声が漏れる。
…わたしやっぱりからかわれているんじゃないだろうか。
「西城さんとは付き合ってると言うか…何と言うか…。まぁ付き合ってる、んだと思います。
でも佐久間さんにお願いがあるんです。この話は余り公にしないで欲しいと言うか…
彼にも彼の立場がありますし、どうか内密にお願いしたいんです」
電話口で「ウーン」と彼は考える素振りをした。どうかお願いだから、このまま引き下がって欲しい。
昔のわたしであったのならば、S.A.Kの社長息子で、顔もタイプの彼にアプローチされていたらそれこそお祭り騒ぎだったに違いない。
けれど今は違うんだ。事情が変わった。
というか、今の自分は西城さんでなくては駄目になってしまったのだから。