【完】淡い雪 キミと僕と
「それじゃあさ、1回食事に付き合ってよ!」
「え?!」
「1回だけでいいからさ~。俺ともデートしてよ」
「無理ですッ。それは絶対に無理ッ」
「え~…じゃあ早瀬さんに言っちゃおうっかな~…」
「無理!それはもっと無理ッ」
「それなら交換条件だよ。1回だけ。別にホテルに連れ込もうって訳じゃないんだから、お昼に1回だけ食事に行きましょうって話。
何でもいいから俺ぇ、美麗ちゃんにもう1回会いたいんだって」
あぁ、頭が痛い。来てほしい時にタイプの男から言い寄られる事はなかった。何で今になって…。
「じゃあ…休日は無理なので、会社のお昼休憩の時でも大丈夫ですか…?」
「もー俺酷く警戒されちゃってるじゃん。
でも、いいよッ。それで勘弁してあげる!
嬉しいなぁ~、美麗ちゃんとデート」
「デートでは断じてありませんから!」
「アハハ、そんなムキにならなくたっていいじゃん。
ふ~ん、でもそんなに良いんだぁ。西城大輝さん。
彼とは結構飲み会やパーティーでも会ってるけれど、いっつも綺麗な女連れてたり色々な女と抜け出すようなタイプだったから
まさか真面目そうな美麗ちゃんと付き合ってるとは思わなかったけれど」
佐久間さんの言葉にズキッと胸が痛む。
それは過去の事だろう。分かってはいる。だって今の彼はとても真面目で、誠実で、女性関係の連絡先が入っている携帯も水没させてしまうくらいで、毎日のようにわたしと会っている。
だから心配する事は何一つないし、不安がる必要もない。婚約者だと親に決められた人にだって、きっぱりと好きな人がいると言い切ってくれた。