【完】淡い雪 キミと僕と

彼の過去の事なんて関係ない。

あいつがいくら誰を抱こうと、どれだけの女と遊んでいようと過去は変えられやしないんだから、けれど当時の事を実際に知っている人の言葉を聞くと、胸が痛む。

「あ。俺は真面目だからね!チャラく見えるかもしんないけど、ぜんっぜん遊んでいないんだから。
取り合えずまた連絡する。美麗ちゃんが好きそうなお店もリサーチしておくからね。」

「はい…。本当に1回っきりですからね?」

「もーしつこいなぁー。また連絡するよ」

「あ!後、連絡はお昼だけにしておいてください。休日もしてこないで下さい」

「なーに?あの男ってそんな嫉妬深いわけ?止めとけ、止めとけ~」

「佐久間さん、うるさいです…」

「アハハ~そんな怒んないでよ~、わかったわかった。じゃあまたね」

電話を切った後、手のひらに汗をびっしょりかいている事に気が付いた。

どうしよう。あんな約束をしてしまって。佐久間さんともう一度会うなんて。しかもふたりきりで…。西城さんにバレてまえば一貫の終わりだ。

いや、バレやしないだろう…。

たった一度だけ、お昼にランチに行くだけ。それも望んで行く訳ではない。これはある意味脅しだった。仕方がないのだ。大丈夫。何がある訳ではない。

1回だけお食事に行って、その時にきちんと断ろう。そして西城さんとの関係も黙っててもらって、もう二度と会わなければ良い。

この時はそんな軽い気持ちだった。後々に佐久間さんとした約束が大事件を引き起こす事も知らずに。


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