【完】淡い雪 キミと僕と
「あのさ、西城……」
「呼び捨てはやめろ」
「大、ちゃん…?」
ソファーに身体を預ける彼に対し、床に座り’大ちゃん’と首を傾げ言ってみると、言いようのない恥ずかしさに襲われた。
自分で言った筈がどこかに穴があれば入りたい程恥ずかしかったが
けれど唐突にそう呼ばれた彼は小さな瞳を大きく見開き、そして片手で顔を覆ってしまう。耳まで赤くなっているのが分かり、あぁ恥ずかしかったのだな、と理解。
けれどそう呼んだ自分はもっと恥ずかしいのだと分かって欲しいものだ。
「何照れてんのよ」
「不意打ちは、ヤバい。そして上目遣いで首を傾げるな、襲ってしまいたくなる」
「でね、西城」
彼の言葉は無視して続けた。
「おい、だから苗字呼び捨てはやめろ」
「今日ゲームしてて、琴子さんが西城と連絡が取れないって言ってたよ」
「あぁそりゃー携帯水没したから琴子の連絡先も消えたからな」
「いや…琴子さん位は残しておくべきだったんじゃあ…」
「だってアンタヤキモチ妬くだろう?」
「いや、妬かないよ。琴子さんは井上さんの物だし…。大体アンタ琴子さんに全く相手にされてないじゃない」
そこでソファーからガバッと起き上がり「そういえば!」と怒りの表情を露わにした。
「またアンタはゲーム内で井上晴人と浮気か?!楽しそうにあいつとゲームをするなッ!
つーかそのゲームアプリ教えろ。俺があいつに言ってやる!」
そう言い、強引に携帯を奪い取る。