【完】淡い雪 キミと僕と
「ちょちょ!止めてよッ。
ねぇ、それよりさ…わたし達が、あの…付き合ってるの
井上さんと琴子さんに言ったら駄目なのかな?」
携帯を手に取る彼の動きがぴたりと止まり、目を丸くする。
「それはいいのか?」
「何が?」
「いや、アンタはそれでいいのか?大好きだった井上晴人に、俺と付き合ってると公言して平気なのか…?」
いや、それはこっちの台詞なのだが?
「大好きだったって言い方止めてよ。わたしは今はアンタが好きなんだから。井上さんと良い友達だし、琴子さんとの事だって応援しているの。
だから…あのふたりにはわたし達の関係を伝えてもいいんじゃないかなーって…、思ったんだけど…」
「井上晴人の連絡先は知っているか?」
「番号とライン知ってるけど?」
「ふんッ。最低な奴だな。俺に琴子の連絡先を消させておいて。
自分はいつまでも未練たらしく過去に好きだった男のメモリーを保存しているとは。」
ちょっと待って。琴子さんの連絡先を水没させたのは自分自身じゃないか。何故わたしが消させたと脳内変換している。
そして未練たらしく保存していた訳ではない。全く個人的な連絡を取ったりはしていないし。
何をそう不機嫌な顔をしているんだか。
すると彼は勝手に電話帳を開き、瞬く間に井上さんに電話を掛け始めた。
ちょ、何する、勝手に。
慌てふためき西城さんの手から携帯を奪おうとするが時既に遅し。あっという間に井上さんへの電話は繋がってしまった。
スピーカーからおっとりとした井上さんの声が響く。